私は以前イギリスに語学の短期留学をしたことがあります。出発する前には、英検準一級習得とTOEIC820点という成績で、流暢に話せないまでも、聞き取りには少し自信もありました。また「留学先で一日中英語での生活する環境に身を置けば、耳もより英語に慣れ、話す力もすぐ自然に身に付くだろう」と、愚かにも本気で考えていました。
いざイギリスでの生活が始まってみると、イギリス英語に不慣れだったこともあったのかもしれませんが、意思の疎通が上手くとれず、自信もすぐに吹き飛んでしまいました。相手の言っていることが聞き取れない、自分の言ったことが分かってもらえない、しっかり頭の中で作文し間違えの無い英語で言ったはずなのに、どうも相手の反応が今ひとつだ。しばらくの間、英語で話すのをためらうくらい、かなリショックでした。でも自分では原因がよく分からなかった。
そんな中、私の通っていた語学学校の先生は、いろいろな国の生徒の英語に日々関わり経験豊かだからでしよう、私の英語もかなり理解してもらえました。或るとき、そういった悩みを相談してみると、アドバイスを貰えました。しかし自分としてはちょっと意外なものだった。それは「私の英語は典型的なジャパニーズイングリッシュで、英語の中に強く日本語の発音の癖が残っている。内容はおかしくないけど、聞く方がそれを分かっていないと、理解できないかもしれない」と言うものでした。
それまでの私は、「英語は耳で覚えることが大事、そして聞き取つた英語をなるべくそれに近い形でマネて発音することが大事」だと信じていて、それに沿った練習もしてきたつもりでした、また自分はそれができているとも思っていた。でもそこで先生の指摘を冷静に受け止めてみると、客観的な視点に欠け独りよがりな解釈で学習を進めていた自分が露わになって、恥ずかしくて穴があったら入りたかった。自分を顧みると、発音の基本的なルールも知らず、ただ英語風に発音していただけ、なお悪いことに早口で。自分が聞き取れている英語は、聞いた通りに再現できていると思い込み、知らず知らずのうちに、勝手な自分の日本語的な解釈がなされているとことにも気づいていなかったのです。
帰国後、発音とその練習法に大きな見直しが必要と感じ、教則本などで練習を試みてはみたのですが、納得し身に付くところまで行かなかった。また忙しかったこともあり、その後、この問題が解決しないまま英語から遠ざかることになってしまいました。
数年後、英検一級の受験を期に、発音を練習できる英語学校を探す中、こちらの神楽坂米会話ヒアリングルームに出会いました。通い始めて程なく感じたことは、もっと早くにこの学校を知り通っていればよかったと思ったことです。それはこの学校がそれまで私の抱えていた、解けない疑間にぴったり答えるものだったからです。私は「英語は耳で聞き覚えることが一番大事で、英語のスペリングや発音記号はその言葉を忘れた際に記憶を呼び起こさせてくれるきっかけ」ぐらいのものと考えていた。でも本当は「英語のスペリングと発音記号には一つ一つそれに対応する『口と唇の形』加えて『舌の姿勢や動き』があり、それを忠実に再現しないと正しい音は作れない。このことは耳で音を聞き覚えるのと同じ程度に重要であること」ということを教えていただきました。
レッスンでは英語特有の『r』や『th』の発音などの重要なポイントを順に練習していくうちに、これまでの自分の発音との大きな隔たりを痛感し、それによってなぜ留学中自分の言葉がうまく通じなかったのか、よく理解できるようになりました。レッスンは反復練習が中心で、体が自然に覚えるまで練習する形式なので、厳しい面もありますが、ただ頭で理解したことと違い、容易に忘れる気はしません。それにマンツーマン形式なので、その場その場で客観的な評価が受けられ、自分の進度もしっかり感じられます。
レッスンが進むにつれて心強く感じたことは、音読したり話したりする際、発音に迷いが無くなってきたことです。まだまだ完成形には程遠いですが、教わったことをできるだけ忠実に発音するように努めています。
先日英検一級の面接試験を受験しました。その中で特に印象深かったのは、試験の際、ネイティヴの試験官が私の意見に何度もうなずき、最後には「私も同じ意見だ」と力強く言っていただいたことです。内容的には稚拙な点も有ったと思いますが、これまでにない手ごたえで、結果的に合格することができました。まさにこれまでの練習の成果が現れた一面だと思います。何せ私は劣等性なので、歩みはかなりのろいですが、これからも続けてがんばっていきたいと思います。
平成16年7月6日
T.T.